ヒグラシの涼しげな「カナカナカナ...」と ウグイスの軽快な「ホーホケキョっ♪」が、絶妙のハーモニーを奏でる元箱根の夏。 緑豊かな庭では、雨にも負けず、寒さにも負けず、そして日照時間の少なさにも負けずに無事成長したハーブ、ローズマリーたちが、 今日も力強く幹を広げ、空に向かって香っています。 トスカーナの丘を飾っていたローズマリー。 太陽の眩しさが激しかったイタリアの大地では、舗装されていない道路は白くサラサラになるまで乾燥を極め、 いつでも水不足のニュースが流れていました。 でもローズマリーは大丈夫。 どんなに大地が乾いても、涼しげな顔ですくすくと育っていました。 そんな植物がこの湿気の多い箱根で果たして育つのか? 最初は心配で、ドキドキハラハラ。。 しかしこちらの心配をよそに、か弱いちいさな1鉢はあっという間に太い幹となり、 ダメ元で始めた挿し木も、全く問題なくスクスクと育って枝を広げ、 ちいさなハーブ園には、今ではローズマリーの壁が出来ようとしています。 その数、なんと! 挿し木で育ったものだけでも約70株! 形を整えるために少し剪定した枝の先を植えておくだけで、 みるみるうちに根っこが生え、まるで魔法のようにミニローズマリー株が出来上がるのです。 春夏で育っては冬の寒さで溶け、また育っては湿気の多い季節に溶け...といった、他のハーブたちとはまるで違うこの生命力。 私たちが眠っている夜の間に、トトロがおまじないをしながら踊っているのでは?と思うくらい、それはそれは素晴らしい成長っぷりです。 あと10年もすれば、この箱根の庭に立派なローズマリー林ができるかもしれません。 そう、トスカーナの大地は、いつでもハーブの香りに包まれていました。 そして夜は星屑。数え切れないほどの満天の星たちです。 夜空いている店舗も少なく、娯楽の比較的少ないイタリアですが、その分、自然の恵みがいっぱい! 湿度が低いせいか空が澄んでいるので、天の川も驚くほどクリアーに見え、 大地では大粒のホタルがこれまた星屑のように舞い始めます。 そして... 毎年夏になると、星空に包まれた野外映画館が各地に登場するのです。 自然志向なのか、高騰する電気代のせいなのか、 エアコン普及率の低いイタリアでは、夏場ともなると、街中の映画館はその多くが長い休暇に入ります。 でも大丈夫。梅雨のないこの国では毎日が快晴。 そして日中と夜間の気温差が非常に多く、夜は外での夕涼みが主流。 だったら映画は、屋外で見ればいいのです。 星空の下で楽しむ映画館は2本立て〜3本立て。 聖母マリア様の被昇天祭8月15日の祝日ともなれば、4本立ての上、途中スイカのサービスまでありました。 立て続けに映画を観た後、帰路に着く頃には、空もうっすら明るくなり始めていて、 近所のパン屋さんからは美味しそうな香りがふ〜んわり。 まだ開いていない店の厨房側の裏口からお願いして、よくパンを分けてもらったものでした。 オーブンから出たばかりの、焼きたてパンの香ばしい香り。 それが映画の後、帰り道お決まりの習慣です。 簡易椅子のギシギシいう音。観客の歓声や拍手の大騒ぎ。スクリーンの向こうを流れる流星。そしてパン屋さん。 夏の大切な宝物たちです。 今年ももう夏真っ盛り。8月10日は流れ星で有名なサン・ロレンツォの夜です。 みんなどんな映画を楽しんでいるのかな? 降るような星空の下で。 2017年8月10日 高野倉さかえ