いつもならまだ雪の降るこの季節。 でも今年は、ただただ豪雨になるほど気温の高い元箱根です。 3番目の月に入るとすぐ変化するのは、早朝の音。 眠りの世界からふんわりとこの世界に戻る瞬間 静かな山の田舎町に例の美声が響き渡ります。 「ホ〜ッ、ホ〜ッホケキョッ♪」 あぁ...そうだ、もう春が来たんだ。 眠い目をこすりながら、ふと、 ベッドの中で顔がニンマリとにやけてしまう。 そんなステキな、やわらかな季節の始まりです。 まだ冬色の渋さが残る大地には 若々しい緑のフキノトウがそこここに頭を持ち上げ、 時折やって来るイノシシは、庭に大穴を開けてはまた森に帰ります。 それにしても...あれ? ウリちゃんたちは、春の山菜にはあまり興味がないのかな? あちこち掘られてはいるものの、フキノトウはしっかりバッチリ残っています。 「好き嫌いしないでとにかくちゃんと食べなさい!」 お母さんイノシシに叱られている姿が、目に浮かぶようです。 そんなある日。 久々の快晴を狙って山を降り、ふらりと伊豆半島をドライブです。 別世界のように花々の咲き誇る世界が、瞳を明るく楽しませ、 その中でも黄色の花が多いこと多いこと! 菜の花や黄水仙、レンギョウにオキザリス、そしてミモザ。 5m以上にもなる大きな木全体が黄金色に染まってしまうほど、 たくさんの花をつけるミモザの木。 その花の一粒一粒は本当にちいさくて、 手に取ってみるとそれはまるで小人や妖精の帽子のポフポフしたお飾りのよう。 そして思い出します。 イタリアのこの季節は、そう、ミモザに溢れていたことを。 3月8日には、Festa della Donnaという女性のためのお祭りがあり、 この時期が近づくと、あちこちでミモザのプチ花束をいただきました。 ガソリンスタンドで燃料を入れてはミモザ、 カフェでお茶をしてはミモザ、 そしてお洋服を見てもミモザです。 ドライフラワーにも最適なミモザの花。 いただいた後の数日間のみならず、それはいつまでもアトリエを彩っていたものでした。 そしてミモザは、花だけでなくドルチェの名前としても有名でした。 淡い黄色のふわふわスポンジ生地を細かくちぎり 生クリームをたっぷり乗せたケーキに振りかける。 あぁ、その姿は、ミモザの花そのものの美しさでした。 そして味も! 日曜の午後。 ミモザの黄色が溢れるイタリアを思い出す、今日は Festa della Donnaです。 2020年3月8日 雨が大地を潤す...元箱根アトリエより。 高野倉さかえ