新しい年の、ある雪上がりの朝。 アトリエ窓から見る外の景色は、澄んだ大気に包まれ輝いています。 「ぴょ〜っ!ぴょ〜っ!!」 ハリのある元気な声に驚き、ふと見ると そこにはヤマガラさんが1羽。 木の上に設置した、年季の入った巣箱の まあるく開けた入口にちょこんと留まっています。 中を覗き込み、ぴょ〜っ! また念入りに覗き込んでは、ぴょ〜ぴょ〜ぴょ〜っ! 子育てシーズンはまだまだ先ですが、すでに物件の下見は始まっているようです。 近くの枝に飛び移り 窓辺の私とみつめ合いながら羽を動かすその素振りは、なんとも言えない可愛らしさ。 それはもう、思わず話しかけたくなるほどです。 去年ここに来た鳥だろうか? それとも一昨年ここから巣立っていったあのヒナだったりして?? この物件をご利用いただいた歴代のファミリーたちを思い出しては、また胸が熱くなります。 窓の向こうの、この野鳥専用物件。 数々の野鳥ファミリーたちが雨風を凌ぎ 数週間かけて卵を温め、ヒナを育てる。 毎年、この物件を気に入ってくれた最初のカップルが クチバシから溢れんばかりの緑の巣材を運び込み、巣作りを始める。 それはちいさな箱から生まれる、そう、奇跡です。 そんな巣箱をみつめながら、今日はふと その巣箱がどこか、妙に何かに似ているなと感じました。 それは…郵便ポストです。 開いている入口の形、そして色こそは違いますが どちらもステキなものがコトンと中に入り 大きな外の世界へと旅立って行くではありませんか! そう、少しだけ口下手の私は、手紙というものが大好きです。 文章を書く時の、ゆったりとした時間の流れ。 便箋や封筒を選ぶ楽しさ。 切手という、ちいさなちいさな絵画を選ぶ喜び。 みつけたお気に入りを、宛名の横に貼る喜び。 そして完成した手紙を「行ってらっしゃい」とポストに投函する時の あの微かな音と感覚。 そして届く手紙はいつも、そう、私の宝物でした。 アトリエの片隅に今もある、大きな古い籐かごのバスケット。 そこには、今まで過ごして来た日々の中でいただいたお手紙たちが ぎっしり、みっちり、そしてずっしりと詰まっています。 子供時代のお友達からの手紙。 バースデーカードやクリスマスカード。 イタリアの郵便屋さんが笑顔で運んで来てくれた、祖国日本からのエアメールなどなど。 日本に帰国する際、最も重たかった大荷物は、仕事道具の油絵具。 そして、この手紙の山でした。 手紙という名の宝物。 遠くから旅をしてやって来る、優しい想いのたくさんたくさん詰まったそれは 時代や世界が変わっても 昔も今も全く変わらない温かさで、こころの奥をホッコリと癒してくれます。 2021年1月15日 新しい年の陽だまりの中で。 高野倉さかえ