そして今年も 窓の外では豆桜の花が一輪そして一輪と開き始め 口いっぱいに巣材をくわえた野鳥たちが 右へ左へと飛び交い始めました。 そんな朝。 ウッドデッキで陽光を浴びるマメ科のルピナスの葉に 昨晩の雨の雫が、キラキラと輝いている姿を発見し夢中で見入っていると 「ジャージャージャージャー!」 空中から、なにやら誰かに威嚇されているようです。 「…この見事な威嚇っぷりは、もしや!」 そう思って慌てて室内に戻り アトリエ窓からそうっと外を見ていると… 「ピーツツピーツツ♫」 シジュウカラのカップルが美しくハリのある声で歌っています。 そしてそのクチバシには、そう 溢れんばかりの、緑の巣材が! 4月最初の土曜日。 空室だった巣箱に、祝ご入居㊗️です。 クチバシにくわえられたその巣材は モスグリーンという名の通りの、苔玉。 行き帰りに時間があまりかからないところを見ると すぐ近場から調達して来ているのでしょう。 敵に巣をみつからないようにする為か 彼らは、巣箱のすぐ下に豊かに生い茂っている苔には全く手を出さず わざわざ他所から、手間暇かけてせっせと運搬を続けています。 あぁ、あんなにやわらかそうで ヒナのベッドに最適そうな苔が、まさにすぐ下にあるのに 使ってもらえないなんて、ちょっと残念! そう思って見ていると… …あれ? コソコソと何やらうごめいているではありませんか。 同じサイズの野鳥。 でも鮮やかな橙が強いあの柄は… ヤマガラさんだ〜! クチバシを器用に使いながら苔を剥がしては どうやら運び去っているようです。 ウチの庭の苔も、どこかで立派に役立っているのですね。 運び来るモノあり、運び去るモノあり。 なんだか嬉しい忙しさです。 そうこうしている間に ちいさなこの鳥たちは、一体、 どのくらいの巣材を新居に運び込んだのでしょう。 できたてのモフモフソファーに タマゴが産み落とされるのはいつかな? 想像すると楽しみで 楽しみで 楽しみでなりません。 毎年同じことの繰り返し。 祝ご入居→家財道具の運び込み→毎日の食料の配達→子供達の賑やかな声→そして大自然への旅立ち。 しかし同じようで 全く同じではないこの行事のひとつひとつが これほど鮮やかで、なんと嬉しいことか! 巣箱の周りは、まだ 若葉の洋服を着る前の、裸の樹々たちと 眠りから覚めたばかりの豆桜が少し。 子供達の成長と共に、この景色が様々な緑に育って 周囲の空気を日に日に彩っていきます。 そして春は、毎年 笑顔を運んで、この地にやって来ます。 🌸Buona Primavera a tutti🌸 2021年4月3日 春の歌声に満ちた、アトリエの窓より。 高野倉さかえ