いつもより暑いのでしょうか? 山のアトリエでは普段あまり耳にしないアブラゼミの音がします。 夏になるときまって聞こえてくるのは 「ホ〜ホケキョっ♫」と「カナカナカナ〜♫」のコンチェルト。 そこに今年は「ジージージリジリー♫」という渋い楽器が時折参加しています。 そんなある夏の日。 強い陽射しが微かな雨雲に少し遮られ 涼やかな風が流れてきた一瞬のチャンスを狙って庭仕事。 そして強大化を続けている紫陽花(いまだに開花中)の 花の終わった部分を少し整理し、剪定を行いました。 我がワイルドガーデンでは 伐採した植物の茎の部分を、ダメ元でとりあえず揷し木にしてみます。 その揷し木専用会場として使われているのが、ウッドデッキ下のデッドスペース。 そのまま捨てるよりは楽しいかと、いろいろ試してみると ローズマリーやサルビア各種以外にも、スタージャスミンやヘンルーダ・ルーと 意外にもたくさんの植物が地面に挿すだけで簡単に育つことがわかります。 今回伐採した紫陽花の茎は 豊富についている大きな葉たちを一枚一枚丁寧に取り除き 上部に残った比較的ちいさな葉も半分ほどにカットしてから、デッキ下の半日影に挿し芽します。 そんな作業を延々と デッキ下にしゃがんで続けていた、その時です。 思わぬ大発見をしてしまいました。 ウッドデッキ下の日陰は、様々な雑草が元気に育つ、自然のパラダイス。 極寒の冬場でも、庭の他の部分より霜が降りにくいのでしょう。 抜いても抜いても、雑草パラダイスは安定のクオリティーで健在です。 でもその中に、何やら見覚えのある可憐な白い花が咲いているではありませんか。 ブライダルベールの草むらです! 美しく艶のあるディープグリーンの葉の群れが 忘れ去られたこの雑草パラダイスの中にこんもりと生い茂っていたのです。 思えば以前、デッキ上のちょうどこの部分にテーブルを置き よくブライダルベールの鉢を飾っていたものでした。 明るい場所が好きだけれど真夏の直射日光には弱く、また風通しが良い場所を好むこの花は 屋根のかぶったデッキ上がちょうど良い場所でした。 枯れてしまった葉や伸び過ぎた茎のお手入れも、もちろんこの場所で。 そのせいか、花後につくちいさな種がいつの間にかデッキ床に落ち その板の隙間からさらに下の雑草パラダイスへと漂着したのでしょう。 比較的水を好むというこの花。 だとしたら箱根の気候はまさに最適と言えます。 1度も水などあげたこともないこのデッキ下で、こんなにも元気に育っていたなんて! 「よくスクスクとここまで育ってくれたねぇ✨」 成長した孫に久し振りに出会うおばあちゃんのような言葉が、うっかりこぼれてしまいます。 そして考えます。 これは、あのプランがいよいよ決行できるのでは?!と。 その名も「ブライダルベール大作戦」。 そう、デッキ下のこの雑草パラダイスを、ブライダルベールの花で埋め尽くす計画です。 風に揺れるちいさなちいさな白い花々…それは間違いなく素敵なことでしょう! さすがにこぼれ種だけでは気の遠くなるような年月を要してしまうので 暖かいこの季節のうちに、新しい苗をジャンジャン育てることにいたしましょう。 カットした茎を水に挿すだけで、あっという間にたくさんの根が出てくるこのブライダルベール。 「伸びた茎先をカット→水挿し→発根→新しい苗として地植え」と 増やして植えるを繰り返していけばこのデッキ下ももしかして...? 夢は果てしなく膨らみます。 その為にはまず、デッキ下の雑草の選別作業をしないと! 「これはブライダルベール…これは何か知らない草…ブライダルベール…雑草…雑草…」 デッキ下の狭くやや暗い隙間に入り込み、そんな作業を続ける姿は 恐らく郵便配達のお兄さんを驚かせてしまうことでしょう。 それでもチャレンジする価値はあるかもしれません。 来年のこの時期、このデッキ下がどのような世界に変貌しているか。乞うご期待です。 2021年8月24日 クチナシの甘い香りが庭に広がる、アトリエの窓より。 高野倉さかえ