太陽が眩しい季節がやって来ました。 庭では一足遅れてようやく紫陽花が咲き始め 各種サルビアも少しずつ花をつけ始めています。 ガーデニングの時間。 標高の高いこの土地では、街よりも比較的少ないとはいえ 庭仕事を始めるとやはり一瞬にして蚊に刺されます。 そんなある日。 山を降り、立ち寄ったホームセンターで 「アロマ蚊取り線香」なるものを発見いたしました。 「香り付きジャンボ!」と得意げに書かれたそのパッケージには ラベンダーとカモミール、そしてバラのイラストが描かれていて 一箱で3つの香りが楽しめるという優れもの。 花の良い香りがして、さらに蚊除けにもなるなら素晴らしいと 携帯用にもなるという蚊取り線香ケースも一緒に購入いたしました。 帰宅して箱を開けると 中にはかなり大きな渦巻きがぎっしりと詰まっておりました。 何はともあれ、まずは香りのチェックです。 …ウ? まぁ…でも普通の蚊取り線香よりはいいかなと 早速ケースに入れようとして大事なことに気がつきました。 …あれ?? 入りません。。。 本体は「香り付きジャンボ!」なのに すぐ脇で売られていたジャンボでないケースを買ってきてしまったようです。 庭に香りだす、ラベンダーアロマの蚊取り線香。 ふと振り向くと お陽さまの下で咲いているラベンダーの花々がため息をついているように見えます。 そして思い出す、異国の夏。 自然派思考の人々がとても多いトスカーナでは 庭仕事の際も薬品をほとんど使わず 虫除け、特に蚊に有効と噂される植物を多く勧められました。 ラベンダーにキンセンカ、バジル、ローズマリーやミントにゼラニウム。 さすがに虫除けスプレーほどの威力はないものの 体に優しい蚊除けグッズは、夏のこの時期に欠かせませんでした。 その中のひとつ、ゼラニウム。 一方、先月のエッセイに登場した鮮やかな青紫色の花は 一文字違いの「ゲラニウム」。 私の中ではこの二つの名前がよく混同しますが 同じフクロソウ科ではあるものの、属が違うらしく全くの別物です。 ゼラニウムは、耐寒性がやや弱めなようで 標高の高いこのアトリエの庭では、まだ越冬できたものはありませんが イタリアの庭ではいつも元気に咲いていた 鮮やかで手間いらずの便利な花でした。 しかし、これら植物のそばにいても 残念ながらやっぱり蚊には刺されてしまう。。 ということで登場するのが 黄色いキャンドル「Citronella(チトロネッラ)」です。 レモングラスというイネ科の多年草から抽出したオイルからなるこのキャンドルは まさにレモンの強い強い香り! 果たして蚊はレモンの香りを嫌いなのかやや疑問ではありますが 何より、その強い芳香が人間の香りをカバーして 蚊を惑わせてくれるというような話を聞きました。 その「Citronella(チトロネッラ)」。 香りがレモンなせいか、色だけは常に黄色でしたが 巷には大小様々なバラエティーに富んだ商品が出回っておりました。 美しいガラス瓶の中に入ったもの レトロなパッケージ缶入り そしてトスカーナでは何より素焼きの壺に入ったものが人気でした。 今年はどれにしようかなと インテリアに合わせてあれこれ選ぶのも、夏の始まりの楽しみのひとつでした。 香りで蘇ってくる記憶は多いですが 今でも強いレモンの香りがすると、長く賑やかな夏の夜を思い出します。 大粒の蛍が宙を舞う夕涼み。 細長いスイカとみんなの笑い声。 そして… 「パチン!」 「キャーッ!さかえが蚊を潰したーっ!」 肌を目掛けて飛んでくる蚊を迎撃する度に、友人が悲鳴をあげます。 アフリカが比較的近いイタリアでは、マラリアへの恐怖からヤブ蚊を潰さないようです。 そんな思い出が浮かんでは消える、元箱根アトリエの夏。 来週はいよいよ、久し振りの芦ノ湖花火大会です。 2022年7月24日 ヒグラシとウグイスの鳴く...アトリエの窓より。 高野倉さかえ