朝。目が覚めると気温は5度。 山のアトリエの大気は、秋色から冬色へと猛烈に加速中です。 今月は、久し振りに街中への出張。 東京インターナショナルペンショーへとnew画材の開拓へ行って参りました。 様々な色のインク、ペン先の試し書きなど あちこち歩き回りながら時間をすっかり忘れ 気がつくと食事も忘れて、入場から4時間以上も経過しておりました。 チケット入手や入場方法がややわかりづらい点はありましたが 足を運んでみて良かった。 ここまでたくさんのものを一気に試し描きできる機会はなかなかないので 私にとっては一種のパラダイスでした。 「あぁ、この色もあの色もそして向こうの色彩もステキ!!」 「ペンの滑り具合はこちらだけど、持ち続けた時の描き心地は向こうの方が良かったかな…?」 そんな試行錯誤を繰り返し たくさんのブースの間を行っては戻り、また行ってはクルッと回って 会場内通路の行き来をエンドレスリピートしている内にひとつ思った事。 「…これは…体力と記憶力との勝負だなぁ。。。」 今年一番の歩数を記録したその日 あらためて、健康には注意しなければいけないなと思い知った1日でございました。 広い会場には、万年筆や、インクをつけて書くつけペン そして中でもガラスペンの美しさにとても惹かれました。 元々ガラス瓶そしてガラス細工が大好きなタチなので このペン先の美しさは手に取らずにいられません。 インク瓶に浸したペン先を瓶の淵で整える時の ガラスとガラスが触れる微かな音。 あぁ、心が弾みます。 そして紙の表面を走るガラスのペン先。たまりません。 しかし、そんな私を今まで頑なに引き留めていた欠点がひとつ。 それは何より、ガラスの壊れやすさでしょう。 使用度の高いアトリエ画材です。 制作に没頭してうっかりデスクから筆やペンが転がり落ちる事も多々あり その度にガラスが割れてしまっては大変です。 しかもペン先だけの交換ができないとなると、なかなか手が出せません。 今回の会場でもそんな葛藤に苛まれながら、右へ左へと画材探しをしていたその時。 美しいインク壺の並ぶ、あるブースに出逢いました。 レトロなデザインの様々なインク瓶に惹かれていると、おや?ガラスペン? しかも、珍しくキャップのついたタイプがあるではありませんか。 「キャップがあれば、せめて使用していない時の破損は防げるかも…?」 そう思いながら足を止めていると スタッフの方が声をかけてくださいました。 「こちらはペン先だけ交換できるタイプのガラスペンです。」 ペン先交換可能のガラスペン!初めての発見です。 しかも手持ち部分のマーブル模様が、まるで水に浮かぶインクのように美しく 心をガッツリと掴まれてしまいました。 お話を聞くと、この会社 某有名油性ペンのインク部分の開発に携わった、インク専門の会社だという事。 はてなマークの、あのペンです。驚きました。 それを聞いた瞬間、心は○十年もの時間を遡り、懐かしの小学校教室へ。 模造紙の上に体ごと覆いかぶさるようにして、夢中になって作った文字や絵の数々。 あの幼き日々の光景が浮かんで来ます。 あぁそうだ、あの油性ペンだ。どれだけ使った事だろう。 引っ越しの時も、イタリアに移住する時も、油性ペンは本当に重宝いたしました。 しかしあれがどこの会社のものなのか、どうやって開発されたものなのか その歴史には全く触れる事もなく今の今まで来てしまいましたが どこかでご縁があってこの場所で出会えた事。嬉しく思いました。 親しみやすい雰囲気と笑顔でひとつひとつ丁寧に説明をしてくださった社員の方。ありがとうございます。 今回購入させていただいたインク各種とペン、とても気に入っております。 今日は澄んだ空の快晴。 山も秋の色が進み アトリエ庭ではコスモスとガウラ、そしてダールベルグデイジーが微かに揺れています。 このダールベルグデイジー。 真夏に苗を購入してから、何度となく雨に溶けてしまい か弱い茎や葉の作りがやっぱり箱根山のお天気には合わないのかな?と とても残念に思っておりましたが 溶けても溶けても太陽が出る度に新たな花を咲かせる元気を再び取り戻し 寒さが進んだ11月末の今もまた復活!まだまだ元気に咲き続けております。 細い細い茎の上にポツンと 黄色の可憐な小花が風に踊る姿、愛おしいです。 2023年11月23日 空気が澄み渡る...秋のアトリエより。 高野倉さかえ