大騒ぎの引っ越し作業を終えた7月のアトリエは、陽光と森の香草そして乾いた風の色が混ざった夏の香りがします。 出逢うと一日付きまとって来る犬や猫たちを始め、カラカラと大きな鈴の音をさせて幸せに歩く丘のヒツジたち、 そしてここにはハリネズミも野生のシカもお出迎え。 そういえばついこの間見た巨大イノシシも、確かこの近辺だったような…。 そんな緑に囲まれた美しい風景と引き換えになくしたものは、今まで普通と思っていた便利さでした。 まず近くの街までは6〜7km。 その間は延々緑、緑、緑。 付近を探検しながら出逢った老人たちにバスのことを聞くと 「バスかぁ〜、それは無理じゃないかなぁ〜ハッハッハ〜♪」との返事。 「そうですよね〜、アハハハ〜♪」… 一緒に大笑いをして帰ってきました。 調べたところ、どうやらバスは一日なんと3本のみ。 日曜日はなんと1本もないそうです。 近所の小学生に聞いてみたところ、徒歩では片道1時間かかるとか…。 あの元気な、足の長〜い子供で1時間ならば、私には軽く2時間はかかるかもしれません。 これはなにがなんでも運転免許を確保しなければ…! 各地の友人知人たちを怖がらせながらも、着々と免許に向けて突進する私でした。(笑) 先日は水も止まりました。 水道工事で早朝断水するとの知らせはあったのですが、朝起きてみるともう水が出ている。 これはまたすんなり終わったものだと感心して、前の晩から溜めておいた非常用水をすべて使ってしまったところで、ワナのような断水。 夜9時半まで水なしの1日でした。 ご近所はどうしているのだろう?と様子を見に行くと、 「パスタが茹でられないじゃないの〜」と騒いではいるものの、なんとなく楽しそう。 慣れているんですね、皆さん。 そんなアトリエの夜空はジャスミンの香り。そして大粒の蛍が舞っています。 2008年7月3日 自然の香る夏のアトリエより。 高野倉さかえ