家々の煙突から煙が上がり始めました。 今年も冬の始まり。暖炉に火をともす季節です。 こちらイタリアの暖房システムは、日本ではほとんど見られない温水循環方式。 湯沸かし器からのお湯を、部屋のあちこちに備え付けてある金属製のラジエーターに循環させて部屋を暖めます。 しかし田舎ゾーンではまだまだ昔ながらの暖炉や薪ストーブが中心。 毎年秋から冬にかけて、ほんのりとたき火のような香りが空を染めてゆくのです。 そしてその香りに包まれると、なぜか心がほんわかしてきてしまう。 特に着火初めの瞬間のあのパチパチという音はたまりません。 まずは着火しやすいように乾いた細めの枝を円錐状に組み、その上に太めの薪をくべていきます。 新聞紙のような紙をねじり、火をつけてから、くみ上げた枝や薪のしたの方に差し込んでいくと…パチパチパチパチ…。 小さな音をたてて暖炉に灯りがともります。 そしてその炎を利用して作る料理がこの季節の名物。 串刺し肉をローストしたり、栗や薄切りにしたパンを焼いたり。 特にそのパンにガーリックと塩をすりこみ、収穫したてのオリーブ・オイルを塗って食べるフェットゥンタはトスカーナの定番でした。 そんな暖炉の欠点は、薪の収穫とサソリ。 寒くなる前に大量の薪を準備しておくのですが、その木々の間にサソリが出やすいのです。 日本で見た事もなかったこの生物、初対面したときは、思わず絶叫してしまいました。 しかしようく見ると…ん?色がやや半透明…?死んでる?? それはサソリの脱皮した抜け殻。 一瞬ホッと胸を撫で下ろしたのも束の間…ハッ!! 脱皮したということはそのワンサイズ大きいご本人が…この部屋のどこかに…?! 「朝、靴を履くときは気をつけなさい」という忠告の意味がやっとわかった1日でした。なるほど! 2009年11月2日 アトリエはほんわか、窓の外ではなぜか朝顔花盛りの異国より。 高野倉さかえ