11月に入ったトスカーナは、遠く広がる秋晴れの青空も姿を消し、雨、雨、雨の毎日。 フィレンツェを流れるアルノ川は100年に一度氾濫するといわれますが、歴史的な大氾濫はいつでも11月に入った1週間。 そして今回もお約束のように大雨が降り、森を潤していたのですが、 今年の不思議なところはその雨の止まないこと止まないこと…。 そしてある日の早朝。部屋の中の完璧なほどの静寂で目が覚めました。 いつも聞こえていた長い雨音がやみ、雨戸を開けると…外はまるで別世界のような快晴に。 これを逃したらしばらく散歩も無理かもと、慌てて今月初めてのキャンティ冒険に出発しました。 雨上がりの空は青の深さも絶品で、水をたっぷり含んだ空気が陽光に照らされゆっくり暖まり始めると、 目の前の世界はそれはそれは爽やかに彩られ… トスカーナ独特の秋の色をここまで満喫したのは久し振りかもしれません。 巨大な絵画のような風景の中には、オリーブ畑と葡萄畑がぎっしり並び、 その間を通るくねくね道に愛車フィアットを走らせ行き着いた場所は、友人の勤めるワイン蔵ヴィッラ・カルチナイア。 重厚な木の扉を開くと、その中は空気の隅々までが濃厚な赤ワインの香り。 キャンティ・ワインの主体であるサンジョベーゼ種の葡萄が強く建物全体に染み込んでいるようで、 アルコールの全く飲めない私には、それだけでも異次元な空間でした。 この葡萄でグレープジュースを作ったら美味しいのかな?などと、バチ当たりなことを考えたり…。 巷ではオリーブの収穫もそろそろ終わり。 あちこちで搾りたてのヴァージン・エキストラ・オリーブオイルが出回っています。 アトリエにもご近所から1本贈り物が。 ラベルのない素朴なガラス瓶に入った自家製オイルは、 スーパーで見かけるような色とはうってかわった、オリーブの実そのものの美しい緑色をしていました。 2010年11月20日 薪ストーブはフル回転、靴下は既に3枚重ねのトスカーナより。 高野倉さかえ