秋の風が吹いています。 ちょっぴりひんやりと冷たい そしてどこか懐かしく切ない秋の風が吹いています。 ちいさい頃からずっと同じ、この感覚。 この風が吹くと、いつもなぜだか胸がキュンとする。 今日はそんな秋の風が、周囲の木々をサワサワと揺らしています。 毎年この時期になると始める恒例行事。 それは、今年のガーデニングのおさらいです。 箱根の山は標高800m超。 冬が厳しく、雨や湿気もたっぷり。 お陽さまの強さがやや足りないせいか、 はたまた温泉地の特殊な土壌のせいなのか、 庭づくりはなかなか難しく、毎年様々なものが消滅してゆきます。 お花屋さんで太鼓判を押された「耐寒性・強」ラベルの宿根草を植えても、 根をおろすどころか気がつくと「あれっ?!」、もう土にかえっている。 植物図鑑を調べ尽くして購入した花も、 やっと冬を越えたのになぜか花をつけなくなってしまったり。 もうこうなったら、実践あるのみ! 毎年少しずついろいろな種類の花にチャレンジ!そしてガーデニング手帳をつけつつ翌年まで研究です。 思えば、トスカーナの大地は花々に優しく、ガーデニングに苦労した記憶がありません。 何を植えてもみるみるうちに大きく育ち、星の数ほどの花々をつける。 ラベンダーやローズマリーなどは、あっという間に膨らんで香り高い生垣に変身。 その他の花々も、肥料や手間などかけたこともなく、ただ時々ジャバ〜っと水をあげるだけ。 そんな世界で育った私は、ガーデニングの難しさなど全く知らずにこの箱根の土地に来てしまいました。 「来年にはラベンダー畑ができてるかも〜♪」 そんな呑気な夢を見ながら迎えた、そう、あれは2年目の夏。 ラベンダーは膨らむどころか少しこじんまりとサイズダウンし、数も半減。 寒さに強いはずのライラックはあれよあれよという間に葉を落として枯れてしまい、 今ではスター・ジャスミンのツルが巻きつく支柱の棒の役目をしています。 オリーブの木もあっという間に枯れ、蒔ストーブの焚き付けに。 「耐寒性に優れた多年草!」という素敵なお墨付きのカラーリーフはすぐに溶け、 大地を埋め尽くすほどによく育つはずのタイムやヒナソウ、アレナリア・モンタナも、 グラウンドカバーになるどころかカサカサのタワシに。 ユーカリの枯れも非常に早かったのを覚えています。 その他、大好きな青色のルリマツリに、花色が紫から白へと変化する不思議なニオイバンマツリに... 数えだすとキリがありません。. そんな中、強くそして元気に育ってくれているもの。 挿し木でどんどん増えるローズマリー、メドーセージ、グレコマ... 気がつくとシソ科の植物がほとんどです。 中でも母の大好きなチェリーセージ・ホットリップスは毎年空へと大きく緑を伸ばし、 紅白のふんわりドレスのような、可愛いらしい花々をたくさん咲かせます。 その他はブルーベリーにチェッカーベリーのツツジ科の植物。 周囲の宿泊施設のお庭にもツツジが多く見受けられるように、 やはりツツジ科はこの地に適しているようです。 北イタリアでも元気に冬越えしていたスター・ジャスミンやエリカ・ダーレンシスも無事成長しています。 弱々しく見えて、意外に強いのがヘンルーダ・ルー。 やや青みを帯びたグリーングレー色の、不思議な香りのハーブです。 ビオラは晩秋から雪深い冬を乗り越え、その後は弾けたこぼれ種で なんと駐車場の砂利の下からも小さな花をつけながら夏まで咲き続けるという、 嬉しい、そして驚きの生命力です。 そして思いの外元気なダークホースは、食卓でも大活躍のイタリアンパセリでしょうか。 それは昨年、意外な場所からやってきました。 ある日、箱根町の選挙に投票に行くと、出口で種のお土産をくださったのです。 ダメ元で蒔いてみると、それがすくすくと育ち、冬を越え、 また今年も美味しくパスタ皿を飾ってくれています。 箱根町選挙推進協議会のみなさま、ありがとうございます。 そしてさらに元気いっぱいなのは、登山電車の線路脇も飾るあの花々。紫陽花です。 調べてみると、来年の花芽が形成されるのが、どうやら気温が下がり始めるこの季節、秋ということで、 夏までに剪定をした方がいいと図鑑には書いてあったのですが、 言われる通りに剪定をしたら、来年どころかもうこの9月に美しい青花が咲き始めました。 秋にも再び紫陽花が楽しめるとは、今年はなんだか素晴らしいです。 そんな箱根山でのガーデニング。 何と言っても驚きNo.1は、やはりムスカリの強さでしょうか。 初年度イノシシファミリーにほとんどの球根を食べられてしまい、絶滅したかと思いきや、 翌年になるとかすかに土中に残っていた食べ残しの球根のかけらが新しい球根を生み、 それがさらに増え続けて今ではかなりの数になっています。 これをすべて植えておけば、美しい青のムスカリ街道ができるのですが... 欠点はイノシシファミリーがお食事にいらしてしまうこと。 そのため庭植えはほぼNG。鉢植えをして彼らの手の届かない場所に置くにも限界が。 せっかくこんなに増えたのにクヤシイ! なにかいい方法はないかと、策を練る今日この頃です。 そう思うとある意味、簡単なトスカーナ・ガーデニングよりやりがいはあるのかもしれません。 本日の気温はいきなりの12度。 久し振りに雨のない、でも冷たい風が早くも手足を凍えさせる、静かな山の水曜日です。 2018年9月12日 高野倉さかえ