時折お邪魔させていただいている近所の渋い温泉があります。 湯治。 その温泉の中では、楽しくおしゃべりするお友達グループあり、 ちいさな赤ちゃんといらっしゃる若いママとそのまたお母さまのファミリー3世代グループあり、 また、海外から日本の温泉を満喫しに訪れる外国人の方々ありと、様々ですが、 私は温泉に関しては、ひとりで楽しむのが大好きです。 空を見ながら、お湯に浸かり、 緑の香りを楽しみながら、お湯に浸かり、 風のささやきや野鳥たちのさえずりを聞きながら、 ただただ無心で、お湯に浸かる。 自分のペースで、 何も考えず、 頭を空っぽにしてのんびりゆったりです。 そしてポカポカ度が頂点に達したら、2階にある畳の休憩場所でゴロンとひとやすみ。 20畳はあるでしょうか。 そんな素晴らしい畳のお部屋もあまり知られていないのか、 はたまた私のリズムが他の方々と激しくズレているのか、 私が行くたび、ほとんど貸切状態です。 大好きな窓際の端っこに、ちょっと大の字にゴロン。 懐かしい畳の香りを感じながら天井を見上げると、 そこには少し曲線のある古びた梁が美しく組み上げられ、 窓からやってくる風が、ふんわり、ゆったりと抜けてゆく。 木製のガラス戸の向こうには、箱根の森の最高級の潤い。 静かな癒しの空間が、お湯で温まった体を睡眠に導き始めたところで 「おっといけない。」と目を覚まし、再びお湯に戻ります。 このままワンターン眠れたら、さぞ気持ちが良いことでしょう。 でもひとりの場合そうはいきません。 あまりに極楽過ぎて、夜まで寝過ごしてしまいそうなので。(そして風邪をひきます) その温泉場。 ひとりで訪れる方がいらっしゃると、お着替えのロッカー付近で、あることが起こります。 「♩♪〜♫♪〜♬〜♫♩」 鼻歌です。 あぁこれからお湯に浸かってゆっくりするぞ〜♬の喜びが、 ついうっかり音となってでてしまうのでしょう。 割と頻繁に、ハミングをしている方に出逢います。 そしてそれが聞こえると、近くにいる私もついついしあわせな気分になってしまう。 そう、それは湯治場で時折出逢う、しあわせのお裾分け。 近くであればあるほど、却ってなかなか行くタイミングがつかめないこの温泉。 ご無沙汰をしてしまいがちではありますが、 伺うチャンスが訪れるといつも、こんな癒しをいただいて帰って参ります。 心も体も、ポッカポカ。 帰り道の車の中は、もちろん私もハミング運転です♫ 2019年5月12日 新緑の美しい箱根の森より。 高野倉さかえ