3月に入ったイタリアは、街中タマゴ、タマゴ、タマゴ。 そうです、イースター・エッグの季節です。 カトリック大国のこの国ではその祭事のほとんどがキリスト教関連ですが、中でも一番賑わうのがこの春のイースター(復活祭)。 街中のショー・ウィンドウは本物の卵…というよりどこを見てもスウィーツ。 そう、様々なチョコレート・エッグの嵐です。 親指の爪ほどのミニミニ・サイズから、大人が1人丸々入るほどの巨大エッグ、 そして表面もプレーンなものあり、砂糖細工で浮き彫り風に飾られたものありと、かなりバラエティーに富んでいて、 中からはおもちゃやアクセサリーなど様々なサプライズが出てくるという仕組み。 各地お菓子屋さんでは、表面に名前を書き込んだり、デザインを選んだりと言った、注文チョコ・タマゴも受注中。 そしてある年の春、そんな「チョコ・エッグ」を巡る面白い事件を耳にしました。 とあるチョコ専門店で、若い男性がオリジナル・チョコ・エッグを注文。 「この名前の女性が来ますからプレゼントしてください。代金は今払います。」とのこと。 しかし彼女らしき女性がやって来ると「私ミルクチョコ苦手なんです。」とガッカリな表情。 「ビター・チョコのと交換してもいいですよね?」の一言に、接客に大わらわな店員は、同じような大きさのビターチョコ・エッグとあっさり交換してしまいます。 そして店に残った特注ミルクチョコ・エッグの方は、売れ残る事もなく、他のお客様の手へと渡って行きました。 しかしその後、注文した彼がやって来て大騒ぎに! なぜならその特注エッグの中には…なんとダイアモンドの婚約指輪が入っていたのです。 「チョコの中からダイアモンドをみつけた方、こちらに連絡してください! 僕の大事なプロポーズ指輪だったんです。」 夕方の全国ニュースで悲痛なメッセージが流れ、話が話だけに大反響を呼びました。 しかしその後、指輪は戻ってきたのか? このカップルはめでたくゴールインできたのか? 誰もラストを知りません。 「彼女の好みも知らないくらいじゃ〜、ダメだなきっと。」 地元のおなじみバールでは、ワインやエスプレッソを片手にした人たちの間で、そんな話題が花を咲かせていました。 今日のアトリエ窓からは、春の香りが漂ってきています。 そろそろ日本の桜が恋しくなる季節です。 2008年3月1日 トスカーナ田舎町のアトリエより。 高野倉さかえ