粉雪が舞っています。 「現在の天気は 曇り時々晴れ」 ネットではそんな表示が出ているのに、窓の外では雪が降っています。 2月の箱根山は毎日が天気予報とはなんだかちょっぴり違った風景。 思わぬところで、雪の景色が味わえます。 空から降り注ぐ、細かいカキ氷のような氷の粉。 それは空気をさらにキーンと凍らせ、 アトリエで作業をする私は重ね着でポッフリと膨らんでいます。 そんな冬の日。 窓の外で音がして、ふと作業の手を止めると、 そこには野鳥の家族が桜の枝をついばんでいました。 忙しそうに、一生懸命何かを食べているのですが、 私には桜の新芽を食べているようにしか見えません。 アトリエ前にある、古い箱根桜の木。 そんなにつついて、春花の蕾がなくなってしまうのでは?とちょっぴり心配しつつ、 でも寒いこの時期です、 食べ物の少ない森の中で生きているこのちいさなふわふわの野鳥たちに いっぱい栄養をとって欲しい!という親心(?)も激しく感じつつ、 やって来る野鳥の群れを、窓から時々眺めています。 気がつくと、この木には野鳥の混成軍がわんさかやって来ます。 冬になると丸々と膨らんで、まるで白い野球ボールのようなエナガ。 黒いネクタイがキリリとしたシジュウカラ。 ヤマガラは赤みがちょっと華やかで、 さらに少しだけガタイがいいのがグレーに朱色のポ〜っと眩しいウソ。 枝の周りをアクロバットのようにクルンクルンと回るふわふわしたその姿たちは、 なんとも言えず本当に可愛いものです。 不思議なことに、ハトはこの時期、柘植の木の方ばかりに集中します。 寒さが厳しくなって食べ物が少なくなると、柘植の実を食べに来るのです。 きっとあまり美味しくはないのでしょう。 ギリギリまで他のものを探して食事をしているのですが、 いよいよ何もなくなってくるとこの木の実を食べ、そこら中を紫に染めてゆきます。 一方ちいさな野鳥の混成軍たちはなぜかいつも 何もなさそうに見えるこの桜の木に集まってくる。自然は奥が深いです。 粉雪の降り始めた朝、そんなことを考えつつ、 雪の結晶の絵の額装作業をしています。 雪が降るといつも、外は静寂に包まれます。 そして私の心は、まるでちいさな子供のように踊り出します。 5歳の時も数10年経った今でも、それは全く変わらずキープ。 そしてそんな雪の日に聞く音楽は、優しいピアノのインストゥルメンタル。 その音の一粒一粒が、雪のひとひらのように空気に浮かんでは消えてゆきます。 来月はいよいよ、30周年記念展です。 標高800mの、雪の降る自然に包まれたアトリエより。 2019年2月14日 高野倉さかえ