もうすぐ夏を迎える、でもまだまだ雨続きの季節。 買い出しで山を降りると、ふと、懐かしいものに目を惹かれました。 それは遠い昔 小学校のお道具箱にいつも入っていた、あのサクラクレパスの色合いです。 懐かしいな...そういえばもうすぐ巷の学校は夏休みだな。 そう思いながらふと気になったのは、そこがスーパーのジュース売り場だという事。 あれ?なぜ突然クレパスが...ここに?? 目を二倍の大きさにして立ち止まって見るそれは クレパスのパッケージを被った、なんとラムネ飲料でした。 「クレパス...ラムネっ?!」 サクラのロゴが入っているところを見ると、コラボなのでしょう。 ボトル6本がまとまったパッケージは クレパスの箱とは似ても似つかないボリュームであるにも関わらず 私の心をガッツリと掴み、◎十年もの時を一瞬にして逆戻りさせました。 思わぬ場所での、まさかのタイムスリップ。 しかも「文字はかけません」などと書いてあるあたりがまたにくい。 鮮やかな6色に彩られたボトルは、それぞれ味が違うようで でも飲んでみるまではヒ・ミ・ツ。 「何味かわかったらホームページをcheck!」などと書かれていて 遊びごごろも満載です。 しかも大好きなラムネ瓶となってはもう買わずにはいられません。 気がつけばウキウキと、鼻歌交じりでレジに向かってしまう始末です。 物心がついた頃から ラムネはいつも、私の大のお気に入りでした。 もちろんその理由は、飲料そのものというよりも外側のガラス瓶とビー玉。 手に持った瓶の中で、微かに転がるガラス玉の涼やかな音。 その音が好きで その色が好きで その透明感が好きでたまりませんでした。 そして取り出せないビー玉の 手の届きそうで届かない 近くて遠い感じが、何とも言えなく好きでした。 ラムネ瓶という、小宇宙。 美しいガラスに守られて輝く惑星を お陽さまのひかりに透かして眺めるしあわせ。 ちいさい頃も今もさほど変わりのない自分に少し笑ってしまう、ある雨の日です。 そして思うのです。 触れそうで触れないガラス玉を想い焦がれる気持ちは 絵を描く時の感覚と、どこかがちょっと似ていると。 こころの中に持っている、手に届きそうで届かない形のない何かを 追い求めて走らせる虹色の色彩のような、そんな不思議な感覚です。 窓の向こうは、今日もたっぷりと水を含む空。 紫陽花の花びらまで、まるで水でできたように見えてくるこの季節。 何味か知りたいけれど、パッケージを開けられないこのクレパスラムネは しばらくアトリエの飾り棚の上です。 2020年7月18日 夏はまだもう少し向こうの...アトリエの窓より。 高野倉さかえ