11月に入ると庭に訪れる 濃厚な青紫色。 カサカサと舞う、茶色い落ち葉の中に ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ...。 毎年恒例のリンドウが、今年も元気に開き始めます。 日1日と冷たさを増す空気の中 庭にはガウラの花がまだまだ元気に咲き誇り 風に揺れる軽快な動きが心を癒します。 このガウラという花。 和名では「ハクチョウソウ」というそうですが 細く伸ばした長い長い茎の先に白い花が咲くその姿は 確かに清楚で美しく、優雅な雰囲気があります。 それもあってか、私の頭の中ではどうしてもこの名前を「白鳥」と変換してしまう。 しかしそれが間違いであることに気づいたのは、そう、ほんの数日前のことです。 花の形に特徴のあるこの花。 長い雄しべを中心に、花びらが4枚左右多少で開くため 風に揺れてひらひらする姿は、そう、まさに白い蝶々の群れ。 とのことでこの名前「白蝶草」という命名がされたようです。 あぁ、スワンの方ではなかった! 毎年、暖かい季節がやって来ると 下界のあちこちで美しく咲き始めているこのガウラ。 6月になるともう、街角では元気に満開です。 それでも山の上での開花はというと、いつもその何ヶ月も後になります。 買い出しに降りた街で、ふと、この花を見かけると その開花時期の違いにいつも驚かされ そして花をつける様子もない、我が庭のガウラたちをみつめては 「ウチの子たちは…大丈夫だろうか?」とドキドキ。 手のかからない花なのに なぜか毎年、親を心配させる子供のように私をハラハラさせる不思議な花です。 少し伸びては、嵐でひよってしまったり またもう少し葉を茂らせては、日光不足で一部溶けてゆく。 ひ弱な茎ばかりが、空へ空へと暖かさを求めて伸びてゆき なかなか葉は大きくならず、蕾もつかず そんなことを繰り返しつつ、待つこと数ヶ月。 そしてようやく、この寒い時期になって満開を迎えました。 11月のひんやりとした空気の早朝。 眠い目をこすりながらカーテンを開けると 少しピンクがかった白が、あちこちでふわふわ揺れています。 ほんの少しの蜜を狙って 蜂や、蝶や、メジロまでやって来るこの花ですが 茎があまりにも細いので、ちいさな蝶一匹の体重にも耐えられません。 忙しく飛び回る蜜ハンターたちがやって来る度に 茎がぐんにゃりと曲がり、花は地面につきそうになります。 そしてハンターが花を離れると共に、ビヨ〜ン! 再び元の位置まで、花が顔を持ち上げます。 そんな動きを見ているとなんだか微笑ましくなってしまう、可愛らしい花々です。 白蝶草という本名を知ったその日。 実はもうひとつ、新たな発見がありました。 1年365日。そのそれぞれの日にはその日にちなんだ花があるそうですが この花はなんと、私のバースデイの誕生花だったのです。 そんなご縁があったとは! この惑星に生を受けて、○十年。 そしてこの花が我が庭にやって来てから、早や5年もの時が経った今秋 初めて、その事実を知りました。 遠い異国のイタリアにいても、祖国の日本に帰って来ても 毎日が、そう、勉強と発見。 新しいものとの出逢いに溢れる、秋の日。 庭の片隅には、ポツリ、ポツリと桜の狂い咲き。 アトリエの窓辺では、花瓶に入れた植物から新しい根が伸び始め チェリーセージやブライダルベールの挿し穂babyたちが すくすくと元気に育っています。 2020年11月3日 大好きな季節を迎えた、アトリエの窓より。 高野倉さかえ