まだ少し下手な、ウグイスたちの歌声が響き渡ると 山のアトリエは少しずつ、春の大気に包まれ始めます。 山へ向かう春の足取りはいつも 下界の都会よりかなりのんびりゆっくり模様。 日は長くなるけれど、空気はまだまだヒンヤリと冷たさを残していて 当分ヒートテックのハイネックシャツが手放せず 夜には薪ストーブも大活躍中の3月です。 それでも森の動物たちは、少し元気に活動を始めたようで 毎朝目覚めて庭に出ると 昨日はまだなかった新しい動物の足跡がそこここに。 モグラたちの勢いもさらに増して 物凄い量の土の山があちこちに連なっており サングラスをかけたお茶目なモグラの姿や 夜間に行われる彼らの大トンネル工事の様子を想像しては 朝からクスッと、微笑んでしまっている自分がいます。 静かな山の空気。 聞こえるのはただただ自然の奏でる音。潤った風。 こうしていると 数日前までの東京での日々が、まるで夢の中の出来事のように感じます。 皆さま 今年も東京丸善本店ギャラリーでの絵画展に足をお運びいただき 誠にありがとうございました。 今回は緊急事態宣言下という、大変難しい状況の中であるにも関わらず これほど多くの皆さまにご声援をいただき 新作をご覧いただけました事、光栄に思います。 長年欠かさず、この絵画展を訪れてくださる皆さまの笑顔。 遠方の皆さまから届けられた、あたたかなお言葉やお心遣いの数々。 見違えるほど成長した、お絵かき教室の子供たち。 変わらぬ笑顔でやって来てくれる、小学校時代の仲間や先生。中学のクラスメイト。 そして宣伝ポスターの名前を偶然発見し これは髙野倉に違いない!と 数十年の時を超え、慌てて会場に駆けつけてくれた高校時代の友人たち。 最終日、タクシーを飛ばしてくださったにも関わらず残念ながら間に合わず それでも決して諦めずに 閉まっているギャラリーの扉をこじ開け、私の名前を呼んでくれた、あの方。 この1週間で、数え切れない程の嬉しい出来事があり それらすべての出来事のひとつひとつが、鮮やかに胸に残りそして輝き アトリエに戻りました今でも、目頭を熱くしております。 皆さま、今回も本当にありがとうございました。 ご声援をいただき、言葉では言い表せないほどの幸せに包まれております。 これらひとつひとつの宝石が、きらめくエネルギーとなって絵筆を動かし 新作となって、次回の絵画展を彩る事でしょう。 これからも一歩一歩精進を続け、前へと進んで参ります。 皆さま、今後ともどうぞよろしくご指導のほど、心よりお願い申し上げます。 Vi auguro una serena, vivace e splendida primavera. 素敵な春が、皆さまの毎日を彩りますように。 ハチミツ色の光に包まれた、アトリエの窓辺にて。 両手いっぱいの感謝を込めて。 2021年3月19日 高野倉さかえ