「♬ゆ〜きや コンコン♬ ♪♬ア〜ラレやコンコン♬♪ 降っても♬ 降って〜も...♬」 ふと気がつくと いつの間にかこの曲をエンドレスリピート ハミングしている自分がいます。 今年も雪の季節となりました。 「まだ降り止まず♬」の1日だった昨日は 朝から晩まで本当によく降りました。 2月のアトリエは雪に埋もれる確率が1年のうちで最も高く その中でもバレンタインデー前後は、いつも雪マークの豊富な季節ではありますが 丸一日ひとときも止まずに降り続けたのは、かなり久し振りかもしれません。 幾千、幾万、幾億もの降り注ぐ雪の結晶たち。 静寂が周囲一帯を包み、海賊船の汽笛も響かず バスも車も通らない一日。 いつも聞こえる野鳥の声や 郵便屋さんのやって来る音もせず 雪の降る日は、ただただ自然の静寂が美しく感じます。 昔からアトリエでは、常にBGMが流れている中での作品制作ですが こんな雪の日は、音楽も全てOFFにして過ごします。 耳を澄ませば、聞こえるのはただただ風の音。 そして時折窓を叩く、乾いた雪の微かな微かな音。 しばらくすると、樹々の枝に積もった雪の重さが限界に達し どっさりとした雪のかたまりが、地面の上に落ちる音がします。 キーンと澄んだマイナス気温の空気の、静寂と淡い色彩たち。 そして雪の翌日はいつも 世界が動き出す文明の音で始まります。 大きな除雪車の走りゆく音。 町役場のアナウンス。 運休明けのバス。そして車たち。 ですが今回は...あれ? 祝日とは思えない程の静けさが、不思議と残った祝日の朝です。 さて、そろそろ雪かきをしなければ。 しかしその前に、毎年恒例の大事な行事が待っています。 空から降って来たこの真白な美しい贈り物に まずは敬意を払わなければ。 その行事とは... 雪遊びです! 雪かきシャベルで片付けてしまう前に、まずは存分に楽しみます♪ 誰も足を踏み入れていない、この美しい雪の上に まずは思い切りダイブ!そしてゴロゴロ。 雪だるまを作ったり、ミニかまくらを建設したり 冷たい雪の上に寝転がって、空の写真を撮ったり。 外見は年々着実に歳をとっていくのに 中身はというといつまで経ってもまるで子供で恐縮ではありますが どうしても、どうしても私には 雪を楽しまずに片付けてしまう事ができません。 時や歳を忘れて雪と戯れる私の前に 羽毛をふわふわに膨らませた野鳥たちが帰ってきます。 その姿はまるで 冬服のダウンジャケットを膨らませながら歩く私たちのように、ぷっくり。 そのせいか、いつもより一回り丸く大きく見える野鳥たちは この時期、その可愛らしさも数倍にポイントアップ。 コロコロに膨らんだ白いエナガさんや シジュウカラやヤマガラ、そしてコゲラなどの混成チームが枝を啄み 一方、地面では キジやコジュケイといった野鳥たちが右へ左へと ふくふくと膨らんだ体を揺らしながら歩き回ります。 そんな鳥や動物たちの足跡探しも、雪の翌日の大事な行事のひとつです。 ひと通り雪に敬意を払った後は ようやくシャベルを片手に、ちょっぴりハードな雪かき作業。 すると、何やらにょろんとした小動物が出て来ました。 「まさかこれはリスなのでは?!」 そう勘違いする私を笑うように、ちいさなイタチは道を横切って走って行きます。 雪が止み、雲の間から陽光が溢れ出すと 世界は、本当に美しく煌めきます。 刻一刻と変化してゆく冬の光に、雪がとろけてゆくように 昨日の静寂も消えてゆく、この世界。 動き出す野鳥たちと屋根から落ちる雫の音。 冬のアトリエは、今日も澄んだ空気に包まれています。 2022年2月11日 大雪の翌日。晴れ時々曇りの...アトリエの窓より。 高野倉さかえ