爽やかな風の吹く、久し振りにとてもよく晴れた日。 新しい花々の探索に山を降り、海岸線へと向かいました。 伊豆方面です。 山では見かけない様々な色彩、風の香り。 その中でも今回は、かなり驚きのものがありました。 「Artemisia abrotanum」 それは少しシルバーがかったグリーンのハーブ。 線状に細かく繊細に分かれた葉っぱをたくさんつけています。 何が驚きだったかというと… 触った時に漂う、私たちがよく知る、あの香りです。 …これはっ!まさにコーラ!! ある意味コーラよりもコーラっぽいとも言える そしてコーラよりももっと爽やかな香りが大気にふわっと漂います。 周囲にいる人、そこを通りかかった人々が皆「あぁ!」とうなずき、表情は驚きから笑顔に変わる。 とても不思議な植物でした。 それだけではありません。 この香りがまた素晴らしいことに、虫除けの効能もいろいろ持っているようで 蚊が近寄らなくなったり、アブラムシが寄り付かなくなったりと、なかなかの優れものらしいのです。 コーラプラント、またはアルテミシア・コーラプラントというネーミングでも多く流通しているこの植物は 調べてみると英名ではサザンウッド、日本ではオキナヨモギと呼ばれているキク科ヨモギ属。 なるほど、ヨモギの仲間なのですね。 このハーブ、元々はヨーロッパ原産らしいのですが イタリア在住時にはアルテミシア(Artemisia)と呼んでいたヨモギはあったものの 残念ながらこのコーラの香りのハーブに出逢う機会がありませんでした。 あぁこの不思議な香り…アトリエの庭にも欲しいなぁ。 コーラと言えば、余談ですが イタリアに在住していた時代の初期は、よく「コカコーラ・キッド」と呼ばれていました。 仲の良い友人と共に食卓につく時には必ず、椅子に座ると同時に目の前にコーラがスッと置かれています。 なぜなら、そのメンバーで私だけがお酒を全く飲めなかったから。 ワインの味は大好きなのに、体がアルコールを分解できないのです。 ワイン大国のイタリアです。その種類は星の数のように多く でもノンアルコールのソフトドリンクの選択肢は日本ほどはありません。 なのでグラスには、自動的にコーラが入ってやって来る、というわけです。 正直、あの粒の大きい強い炭酸が喉に刺さる感じがやや苦手で 昔からコーラという飲料自体にはあまり興味はなかったのですが、仕方ありません。 そしてそれは後日、「キノット」という柑橘系エキスを使ったイタリア原産飲料と出逢う日まで続きます。 特にガラス瓶に入っている、スローフード協会の認証付きのものは大好きです。 それを発見してからはすっかりキノット漬けになっておりました。(笑) さて、そろそろ話をコーラプラントに戻しましょう。 コカコーラには興味はないものの、このハーブの香りは…なぜでしょう? なんとも言えない魅力的なものをたくさん秘めているような気がします。 そこで、我が家でよく問題になる耐寒性をチェック。 コーラプラントはどうやらかなり強いハーブで、マイナス15度くらいまでは平気そうです。 合格! 常緑小低木という事だし、宿根草なら山で育つ可能性はあるかもしれません。 もしも冬に地上部が枯れたとしても、春になればまた緑が復活するハズ。 これは是非、アトリエのガーデンにも植えなければ! 今年増やしたい植物がまた増えてしまいました。 海辺を車で走ると、ニオイバンマツリの香りが海風に乗ってやって来て 山あいの坂道ではみかんの花の香りも楽しむ事ができたこの日。 ふと立ち寄って見た白い花たちには、もう中央にチビみかんの形ができていて感動です。 季節の合間のせいでしょうか、少し体調を壊す日々が多かった最近ですが ようやく回復した体は久し振りの陽光に喜び、様々な植物たちに元気をたくさんもらって帰宅しました。 そしてアトリエの空は今日も、素晴らしい青のトーンで輝いています。 2024年5月18日 シジュウカラはヒナに餌を運び大忙しで飛び回る...晴れた日のアトリエより。 高野倉さかえ